イマドキの親子関係(20代とその親)
お互いをサポートする対等さがある
個人差や家庭による違いがあり一概には言えませんが、一般的には、次のようなことが言えるかと思います。
一昔前の親子関係は、親の役割がある程度はっきりし、親らしい態度をとっていました。親は一定の厳しさを持ち、ときに手をあげて叱るなど子どもをしつけるという行動もみられました。現代は厳しいしつけよりも、話を受容的に聞くこと、サポート的な関わり方がみられます。権威と力を持った上下関係から、より対等な関係が強くなっている傾向にあると考えられます。「友達みたいな親子関係」という表現が現代の親子関係の特徴を表しているでしょう。
結婚に対する考え方、誰から影響を受けましたか?
子どもにとって親から結婚や人生のことをとやかく言われるのは煩わしく感じるものですが、親の言動が子どもの結婚に対する考え方に大きな影響を及ぼしていることは事実です。
結婚や出産に対する考え方に影響を与えた人やものを尋ねたアンケートによれば、結婚や出産に対する考え方について誰かに影響を受けたのは57.4%。影響を受けた人のうち、親が35.3%で最も多く、次いで親以外の身近な人(兄弟姉妹・友人・上司や同僚・身近な尊敬する人)33.5%、それ以外(有名人・先生・マスコミ・SNSなど)が23.7%でした。
偉い人や有名人の話も大事ですが、それらはどこか別世界のことととらえがち。人はやはり、親をはじめとする身近な存在から大きな影響を受けるものです。親や周囲の人が「結婚はするのが普通」と思っていれば「結婚は普通にするもの」という考え方になりますし、親や周囲の人が「結婚はしなくてもよい」と思っていれば「結婚はしなくてもよい」という考えになります。そういう意味で、親自身の考え方を発信するということは大事です。 ただ、「No2.上手な関わり方、接し方」でも書きましたが、自身の考えを子どもに強制するのはNGです。強制しない形で親の思いを示せるとよいでしょう。
結婚・出産に対する考え方への影響
n=6562人
最も大きな影響を受けた人やコト | 割合% | |
---|---|---|
親 | 35.3% | 35.3% |
友人 | 19.5% | 33.5% |
身近で尊敬する人・信頼する人 | 5.5% | |
兄弟姉妹 | 5.3% | |
職場の上司や同僚 | 3.2% | |
SNSの情報 | 8.7% | 23.7% |
テレビや新聞、インターネットのニュース・記事 | 5.2% | |
芸能人・著名人 | 3.8% | |
インフルエンサー | 3.0% | |
学校の先生や授業で習ったこと | 3.0% | |
配偶者や交際相手 / パートナー | 6.3% | 6.3% |
その他 | 1.3% | 1.3% |
合計 | 100% |
Q.あなたの結婚や出産に対する考え方や捉え方に、最も大きな影響を受けた人やコトをお答えください(1つ)
- 出典:
- こども家庭庁によるWEB調査
- 調査対象:
- 15〜39歳の未婚/既婚の男女一般生活者
- 調査エリア:
- 全国
- 調査期間:
- 2024年7月8日 〜16日
- 調査方法:
- WEB調査
- 有効回答者数:
- 20000人(未婚男女18000人、既婚男女2000人)
子どもの恋愛や結婚への親の関わり方
~将来結婚を望んでいるお子さんを持ち、お子さんの結婚を望む親御さんへのアドバイス~
親と子は別人格です。少しずつ親離れ子離れをしていく存在なのです。子どもを信頼し、少し距離をおいて見守ることが大切です。むしろ、親が自分の考えを子どもに強制するのではなく、親自身が自分の生き方を子どもに見せる形で示せるとよいでしょう。
強制することなく、自分の生き方を子どもに伝える一番いい方法は、親自身が自分の生活が幸せであることを示すことです。結婚することが幸せだと口で言っても、配偶者とたえずケンカしていたり、結婚生活の愚痴をいつもぼやいたりしてばかりでは、何の説得力もありません。もちろん、夫婦でケンカをしたり愚痴を言ったりすることもあって構いませんが、同じくらい仲の良い姿も見せられるとよいでしょう。ケンカや愚痴に気をつけるのは夫婦関係だけではなく、親子関係でも同じです。仲のよい親子関係は、子どもが生まれてよかったというメッセージを子どもに伝えることになり、こうした姿勢は、子どもの自尊心を高めるとともに、結婚して子どもを持つことへの肯定的な考えを促すことにつながります。
日常生活のちょっとした場面で、さりげなく自分の楽しかった体験等をつぶやくのも一つの方法です。たとえば、テレビで観光地の情報が放映されているとき、「ここ若い頃デートで行ったなあ・・・」などのように。大事なポイントは、さりげなく一言で。こうしたつぶやきに質問や反応があれば、話題を広げればいいし、何も反応がなくても、親にもいろいろな体験があるというメッセージは伝わると思います。
子世代が普段の生活の中で結婚や子どもを持つことに憧れを抱くシーン
- 1位
- 街中で家族連れを見たとき
- 2位
- 親以外の近しい身内や友人・知人が幸せそうな結婚生活を送っていると感じたとき
- 3位
- 結婚している友達や知人の話を聞いたり、その家族や子どもと交流をしたとき
- 4位
- 結婚式に出席したとき
- 5位
- 友人や知人のSNSなどで家族の様子を見たと
Q
あなたは普段の生活の中で、「結婚っていいな」「結婚したいな」「子どものいる生活っていいな」「自分の子どもが欲しいな」と思うときがありますか。あるとした場合、どのようなときに思いましたか。(いくつでも)
※すでに配偶者がいらっしゃる方は、結婚前のことをお答えください。
- 出典:
- こども家庭庁によるWEB調査
- 調査対象:
- 15〜39歳の未婚/既婚の男女一般生活者
- 調査エリア:
- 全国
- 調査期間:
- 2024年7月8日 〜16日
- 調査方法:
- WEB調査
- 有効回答者数:
- 20000人(未婚男女18000人、既婚男女2000人)
言葉で伝えることの
いい面と悪い面
【いい面】
人間だれしも、自分が経験したことがないことは不安です。何か手がかりがあることで不安は解消し、手がかりを参考に行動することで成功につながる可能性も高くなります。その意味では、恋愛・結婚に限らず、あらゆる人生の先輩である親が子に対して、何らかの経験を伝えることは、子どもが学ぶ機会を得ることにつながります。恋愛についても同じで、子どもが「親も自分と同じように恋愛を楽しんだり苦しんだりしてきた」という感覚をもてることは、子どもにとって安心感などを高めることにもなります。
【悪い面】
親から学ぶことがマイナスに働くこともあります。たとえば「相手が少々嫌がっても強引に働きかけるとよい」といったアドバイスは、親の時代ならアリだったかもしれませんが、今ではモラル的にナシ(難しい)でしょう。世間的な常識は時代と共に変わり、親子がそれぞれイメージしている内容が大きくずれていることもあります。ずれを感じる親の関わりに対して、子どもは違和感や無力感などをもち、耳に痛く感じたり反発したりするかもしれません。
お話いただいた先生はこちら
仁愛大学人間学部心理学科教授
森 俊之氏
福井県出身。高校までは県内で育つ。
筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了。博士(心理学)。
臨床心理士、公認心理師のカウンセラー資格をもち、
相談活動にも従事。4児の父親。