親としてこの行動あり?なし?

福井県子世代アンケートから見えること

Do you do this as a parent? none?

「私たちの若い頃は…」なんて発言をしていませんか? 子どもの心を知るにはまず私たちを取り巻く現代の社会を知ることから。仁愛大学で心理学を教えている森俊之教授に昔と今の違いについて、社会的、経済的、教育的な観点からお話を伺いました。実際のデータを織り交ぜて解説します。

福井県子世代アンケートから見えること

福井の若者に
聞きました!
両親との関係は
どんなかんじ?

実際、どんな距離感で恋愛や結婚の話を進めていいのか分かりませんよね。
そこで福井県の若者男女にアンケートを取りました。子世代のリアルな意見をご覧ください。

  • 母親との関係

    母親との関係性について、一番近いものを教えてください。

    母親との関係統計グラフ

  • 母親の婚活への関わり

    母親が恋活・婚活に関わることについての考えを教えてください。

    母親の婚活への関わり統計グラフ

母親との関係性と恋活・婚活に関わることについての考えのクロス集計

母親の婚活への関わり
母親との関係 許容できる 一部許容できる
ものはある
許容できない
とても良好 9人(20%) 6人(13%) 6人(13%)
どちらかといえば良好 0人(0%) 13人(28%) 6人(13%)
どちらかといえば良好ではない 1人(2%) 0人(0%) 2人(4%)
全く良好ではない 1人(2%) 0人(0%) 2人(4%)

※クロス集計は、その他を除く回答で再集計(n=46)

  • 父親との関係

    父親との関係性について、一番近いものを教えてください。

    父親との関係統計グラフ

  • 父親の婚活への関わり

    父親が恋活・婚活に関わることについての考えを教えてください。

    父親の婚活への関わり統計グラフ

父親との関係性と恋活・婚活に関わることについての考えのクロス集計

父親の婚活への関わり
父親との関係 許容できる 一部許容できる
ものはある
許容できない
とても良好 8人(20%) 6人(15%) 4人(10%)
どちらかといえば良好 1人(2%) 11人(27%) 9人(22%)
どちらかといえば良好ではない 1人(2%) 0人(0%) 0人(0%)
全く良好ではない 0人(0%) 0人(0%) 0人(0%)

※クロス集計は、その他を除く回答で再集計(n=40)

恋活・婚活において
言われて反発を覚えた
言葉があれば教えてください。※一部抜粋

  • 母親から

    • あんな子だめ。
    • まだ彼女おらんの?
    • 早く結婚しなさい。
  • 父親から

    • (結婚)まだ?
    • まだ彼女できんのけ?
    • 結婚しなさい。
    • 早く嫁をもらってこい。

恋活・婚活において
言われて前向きになれた
言葉があれば教えてください。※一部抜粋

  • 母親から

    • 自由に生きて良いよ。
    • 頑張んなね。
    • 彼女ができたら家に遊びに連れておいで。
  • 父親から

    • 好きなようにしたらよい。
    • 頑張れ。
    • 交際経験も大事だ。

出典
恋愛・結婚に関する相談者、家族の関わりに関するアンケート(2024年11月結果)
福井県在住のタップル会員(n=50)

親の婚活介入、
OK?NG?

父親との関係をみても母親との関係を見ても、8割を超えるものが「良好」と答えており、親子関係がけっして悪いわけではないようです。そんな良好な親子関係にあっても、婚活への関わりについては、「一部許容できるものはある」や「許容できない」という回答が大部分を占めています。

「一部許容できるものはある」を、基本的に「許容できる」と捉えるか「許容できない」と捉えるかは判断が難しいところです。そもそも、この中間的な状態を除いて「許容できる」と「許容できない」で比べると、「許容できない」という回答の方が多いので、今の若者は基本的には親が婚活に関わることはNGであると捉えていると考えた方がいいでしょう。

このため、基本的には親が婚活に関わることは難しいですが、「一部許容できるものはある」という回答が多いことから、子どもの気持ちをうまく理解しながら、ちょっと関わってみるのもいいかもしれません。

また、親との関係をクロス集計でみてみると、「許容できる」と回答するものは、ほとんどが親との関係が「とても良好」というものでした。親が婚活に介入することを許容できるかどうかは、親との関係性によって違うことから、まずは親子関係を良好にすることが大事かもしれません。

お子さんを理解している
姿勢を伝える
言葉をかけましょう

実際に声かけをされて前向きになった言葉として多いのは、「自由に生きてよい」や「好きなようにしたらよい」など本人の自由を尊重する内容の言葉です。「できたら・・・」という言い方や「・・・も」という表現のように複数の可能性の存在を匂わせる表現も、本人の自由を尊重するものといえます。そのほか、単純ですが「がんばれ」という包括的な励ましの言葉もプラスに受け取られるようです。

それに対して、「まだ・・・?」という問いかけや「早く・・・」という促しは、反発を招く表現の代表といえます。これらの表現は、目標が達成していないことを強調する表現であり、その意味では相手を否定する表現ともいえます。相手を否定するという点では、日常生活の過ごし方や付き合っている恋人のことを悪く言うこともNGです。あなたはダメだと否定されてうれしい人はいません。否定的なことは言わないようにしましょう。

「がんばれ」という励ましは、よく使われる声かけで、小さい頃から親、先生、友達などからよくかけられてきた言葉です。幼い頃から何度も聞きなれたフレーズは、自然と懐かしさや愛情を呼び起こし、自分が受け止められているという感覚を引き起こしてくれるでしょう。大人になるとなかなか他人から「がんばれ」と声をかけられる機会は少なくなり、そういう意味でもいい声かけだと思われます。ただし、既に十分な努力をした後の状態で「がんばれ」という声かけをされると、「既に十分にがんばったのに、これ以上何を頑張れというのか、私のことを分かっていない」とマイナスに作用することもあります。その意味では、「がんばれ」という励ましは、毒にも薬にもなる声かけで、使うタイミングや頻度が大事かもしれません。

「自由」を感じさせる表現も大事です。私たちは誰かから強制されるのではなく「自由でありたい」「自分で決定したい」という思いをもっています。そのため、他人から強く指示されたり命令されたりすると、そのことに反発心を抱き、あえて言われたことと異なる行動をとってしまうということがよくあります。心理学では、こうした特徴を心理的リアクタンス(心理的抵抗)とよんでいます。人間は、何かに自分の行動の自由を脅かされたり、自由を奪われたと感じたりしたとき、その自由を回復するように強く動機づけられるわけです。「必ず…」とか「絶対…」のように断定的・強制的な表現は避け、「できたら…」とか「…も大事」という結果を選択できるような表現ができると望ましいです。
自由を認めるということは、一人の人間として信頼し認めるということでもあります。周囲から信頼され認められることは最もうれしいものです。信頼しているという姿勢を伝えることが大切です。

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お話いただいた先生はこちら

仁愛大学人間学部心理学科教授

森 俊之

福井県出身。高校までは県内で育つ。
筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了。博士(心理学)。
臨床心理士、公認心理師のカウンセラー資格をもち、
相談活動にも従事。4児の父親。