3組に1組は離婚する時代」という言葉はもう聞き慣れている読者も多いかもしれません。日本の少子化(出生数の減少)は、夫婦(特に初婚同士)間の子の数の減少の影響は小さく、婚姻減に並行してほぼ同率で減少し続けています。
わかりやすく例えるなら、花畑に花が咲かなくなったのではなく、花畑そのものが街から消えていっているのだ、という状態です。
平成~令和時代は、未婚化と離婚化の時代です。今回は離婚の発生状況をデータで読者にお伝えするとともに、親世代が気を付けなければならないことについてお話ししたいと思います。
福井県の離婚化指数は35.3%(2024年単年)
筆者が使用する「離婚化指数」という言葉(筆者考案の指数)について、簡単に説明をしておきます。ある一定期間に提出される、婚姻届数に対する離婚届数の割合を計算したものが離婚化指数です。「離婚率ではだめなのか?」と思う方がいるかもしれませんが、この離婚率は人口当たり指数のため、その自治体の高齢化状況によって大きな影響を受けてしまいます。結論からお伝えすると、高齢化エリアほど離婚率は低くなります。どうしてでしょうか?
1950年から2024年にいたるまで、離婚は結婚後20年までの同居期間内でそのほとんどが発生しています。つまり、婚姻届の提出ピークが男女ともに今も昔も20代後半ですので、40代後半までの男女で多発しているわけです。そうすると、高齢化が進んでいる50代以上の人口比率が高いエリアでは当然ながら、人口比で見た離婚届の提出割合(ならびに件数)は少なくなります。
一方、若い人が多い(人口に占める40代まで人口の割合が高い)エリアでは離婚届の提出割合が高くなります。つまり、20代人口の都市集中が強まる現状では、都市ほど離婚率は高めに、若者が去り高齢者割合が高い中山間エリアほど低くおさえられることになるのです。「70代以上のおじいちゃん、おばあちゃんばかりの村における離婚率は0だ」といわれれば、「そんなの当たり前じゃないか・・・」と、さすがに皆さんも気がつくでしょう。
このように人流を無視した自治体間の割合指標による比較は、人口問題において致命的な誤解を生みやすいため、注意しなければなりません(幸福度比較などもそうです)。
一方、離婚化指数であれば、そのエリアでその年(または3年間などの一定期間)で耳にする結婚話にたいして、離婚話をどのくらい耳にしそうなのか、という指標となります。これから結婚を考える若者たちにとって、結婚に対する大きな不安(不穏)情報の大きさを推しはかることが可能な指数ともいえるでしょう。結婚話3件に対して1件の離婚話が聞こえてくるエリアと、5件に1件程度のエリアとでは、そこで暮らす子どもや若者が結婚に持つイメージは少なからず異なるはずです。
早速、2024年の離婚化指数の状況を都道府県単位でみてみましょう。
2024年 離婚化指標 ワーストランキング

なんと青森県、高知県、宮崎県、沖縄県は離婚化指数が50%を超えており、耳にする離婚話が結婚話の半数以上になりかねない、という状態です。これではさすがに地元の若者が「離婚ばかりだ」と感じてもおかしくはないですし、結婚することに対して不安な気持ちになりやすいかもしれません。しかし、これらのエリアの大離婚化状態の最大の要因は、実は結婚件数の大幅な減少にあるのです。離婚化指数ワーストランキングの上位エリアでは、耳にする結婚の数がそもそも少ないために、人口の多い上の世代から発生する離婚の数が大きく感じられてしまう状態にあります。青森県や高知県は、20代女性の流出率で毎年1位2位を競うエリアであることから、地元を去って地元にいない女性から地元の結婚は生じない、という「若年女性流出が生み出す婚姻減」の背景があります。
日本全体でみると、38%離婚化という高い指数となっており、年々、この離婚化指数が大きくなってきています。すでに離婚せざるを得ない状況の2人に対して、離婚するなという話ではありません。ただ、離婚増加の上流問題として「離婚に至るような結婚が多発している」ことはしっかりと問題視するべきでしょう。
さて、全国平均よりも離婚化指数が低いエリアは9エリアあります。首都圏全ての4エリアと北陸地方全ての3エリア(富山、福井、石川)、そして、愛知県と滋賀県です。このうち婚姻統計の主役となる20代の若者が転入超過にある若者人気エリアが首都圏の4エリア、流出超過にある若者流出エリアが残る5エリアです。
若者が転入超過かつ離婚化指数が最も低くなっているのが東京都で、唯一、離婚化指数が3割をきっています。東京一極集中が1997年から続いており、すでに30年弱も経過していますので、それにもかかわらず離婚化指数が低い(過去30年弱の間の婚姻から発生する離婚が低く抑えられている)ことから、「若い人が多いから結婚が多い(=離婚化指数が低い)だけだ」とは言えない状態です。以上から、東京都は現在日本一、離婚化しにくいエリアといえます。
東京都をとりまく3県は、東京への通勤圏として子育て世帯(30代以上)に人気があり、転入超過エリアとなっています。一方、北陸や中部エリアについては若者の流出が目立つものの、「地元の価値観が合わない若者が出ていく中で、地元で結婚した男女においては、離婚が起こりにくいエリア」となっているようです。対照的に、離婚化指数ランキングのワースト上位に多い東北地方や九州地方は「地元の価値観が合わない若者が、離れたくても地元を出ていきにくい条件がある」(ので、地元で結婚しない、または結婚しても離婚となりやすい)もしくは「離婚しやすい環境にある」ということかもしれません。
一例になりますが、2025年11月に福井県と同じ北陸地方の富山県(離婚化指数が東京都についで低い低離婚化エリア)で実施された大規模婚活イベント「とやま恋さんぽin環水公園」(富山県在住の20~39歳の男女が対象)では、なんと募集定員200名にたいして、男女あわせて600名超の応募がありました。同じ県内の若者との出会いを渇望している若者たちの姿が浮き彫りとなったイベントです。地元価値観にうんざりしていたなら「できれば県外の人がいい」となりかねませんが、大盛況という結果となりました。「価値観のあう地元の若者同士の(だがしかし日頃出会えない相手との)広域の出会い不足」が地元にある、ということを見事に示したイベントとなりました。ですので、もしかすると北陸地方は「地元での結婚に至った男女間においては、価値観が合うため、離婚が起こりにくいエリア」という解釈がある程度は妥当なのかもしれません。もちろん、出ていく若者がとまらない状態を放置する、軽視することは、人口政策としても、多様性の観点からも決していいことではありません。流出人口が多いという点から、Z世代に人気がある地元価値観とは言えないものの、地元に残った若者には一定程度は受け入れられている社会風土にあるのでは、というのが、福井県をはじめとする北陸地方の印象です。
スピード離婚は減少するも、5年から10年の離婚が多発
次に離婚するタイミングを「離婚までの同居期間」でみてみましょう。
1950〜2024年 平均同居期間の推移と婚姻数、離婚数の推移

国の統計では離婚届が提出されるまでの夫婦期間ではなく、実質的な破綻を示す「夫婦別居時点で何年経過しているか」を測定しています。実際、筆者が知る限りでも2~7年程度の間、離婚裁判となっているケースもありますので、実質的な破綻の時期がいつ訪れたのかを知るために、妥当な測定方法だと思います。
離婚までの平均同居期間は1950年の5.3年からじわじわと長くなり、1980年代には10年を超えるようになります。その後も長期化の傾向で、2024年では12.8年と、50年代の倍以上の期間になっています。婚姻に対して離婚割合が増えているトレンドですが、わかりやすくいうと、「昔は離婚そのものは少ないものの、離婚する場合はスピード離婚だった」というイメージです。
次に、平均同居期間データだけではなく、もう少し詳しく、同居期間別の割合データをみてみましょう。
1950〜2024年 離婚までの同居期間推移

1970年までは5年未満の離婚が半数を超えていました。筆者の祖父母世代、親世代の話になります。当時の話を高齢者の方にうかがうと、結婚後早期にこどもが授からなかった場合に離婚になったり、そもそも子どもが作れるかどうかのお試し婚のような結婚があったりしたといいます。当時、子どもが授からないことで早々に離婚になった若い女性が地元に出戻りで帰ってきたものの、すっかり心を病んでしまい、自死を選んだという話もうかがいました。また、うっすらとした記憶ですが、筆者がまだ小学生くらいの頃、テレビドラマのテーマに「子どもが授からず、こどもを誘拐する女性の悲話」というものがあり、今の未婚化日本の歴史的背景として、不妊を一方的に女性の問題とする歪んだ夫婦価値観が昭和時代の日本にあったことを感じます。ちなみに世界保健機構(WHO)は「不妊原因の5割は男性にある」と発表しています。
話は戻りますが、離婚までの同居期間が年々長期化し、この5年程度は10年未満の離婚でようやく半数となっています。ただし、いくら長期化しているといっても、15年未満で65%、20年未満で76%となっていますので、結婚後20年くらいまでに大半の離婚が発生しているという状態です。
2024年 離婚までの同居期間

最も直近では、離婚までの期間の2割以上が5~10年と最も多く、離婚のピークは同居5年から15年のあたりにあります。年齢でみると男性は30代後半、女性は30代前半で、この年齢ゾーンは統計的には第1子~3子の子どもが最も多く授かるピーク期間となっています。子どもを授かる時期において、何らかの破局が多く発生しているということが指摘できそうです。
「働かなくてええんやで?」はモラハラの典型例
1子から3子の出産時期に離婚が多い?それならば、女性はそんなに仕事を頑張らずに、子育て期くらいは仕事を辞めて育児に専念すれば(仕事量を落とせば)いいのに、と思った読者の皆様は、実はあなたのそういった価値観が若い夫婦を破局に追い込んでいるかもしれません。
今の若い世代は「妻が両立するコース」を理想の(やむなしではありません)ライフコースと回答しています(2021年の国の調査で18~34歳の男性の39%、女性の34%・2024年の東京商工会議所の東京在勤若者調査で18~34歳の男性の52%、女性の55%が両立コースを選択)。
この「妻が両立するコース」は、妻が子育て期も仕事を辞めずに働きつづけるライフコースで、「再就職コース」という妻が子育てのためにいったんその時の仕事(雇用形態)を辞め、子育てを軸に就業をあわせて再就職する「再就職コース」とは別物です。この両立コースについては、国の約5年に1度の調査ごとに選択割合が急増している若者のトレンドのライフコースとなっていますので、今後も大きく割合を伸ばすでしょう。
よく考えてみれば、今の20代は男女ともに5割以上が4年制大学を卒業しています。女性の方が、4年制大学進学率が高い県も出てきています。若い男性からみれば「どうしてそれなりの給与を彼女ももらい続けられるのに、自分だけが一生仕事を頑張る話になるの?」でしょうし、若い女性からすれば「何のために奨学金をとってまで進学したと思っているの?仕事をおさえてもいいとかって、どれだけご都合主義な若者応援なの?」となります。
なんでも補助金などのお金で解決できる、または「女性が就業を控えて男性にイイ仕事を与えればいいのだ!」と考えてしまうのは、まだ女性が男性ほど稼ぐこともキャリアを望むこともできなかった、そして、男性のほうもどんなに辛くても女性の経済力に頼ることができなかった世代の典型的なアンコンシャスバイアスに基づく「モラハラ発想」の1つです。
こういったモラハラ発言やそれに基づいた社会機運が、今の若者の子育て環境や夫婦の在り方に暗い影を落としている面は否めません。つい最近、中部エリアの結婚相談所で、20代の男性が「まだ誰も自分の職場で男性が育児休業をとったことがないから、自分もとる予定がない」と20代の女性に悪気なく言い放ってしまい、それまではとても順調だった真剣交際が即終了となったという事例が出てきています。決して安くはない結婚相談所に登録できる収入や財力が男性にあっても、このような時代です。
親世代の皆さんも、「自分の常識が今の若者の非常識ではないか」と、発言や行動に十分気を付けることが必須の時代です。気づかないうちに、あなたがあなたのお子さんの交際クラッシャー、離婚促進剤になっているかもしれません。
少なくとも、両親の姿が子どもたちのよきロールモデルだったとしたら、ここまでの激しい未婚化はこの日本におこっていなかっただろうということに、私たちは気がつかねばならないのです。
お話いただいた先生はこちら
ニッセイ基礎研究所
天野 馨南子氏
あまの・かなこ
ニッセイ基礎研究所生活研究部人口動態シニアリサーチャー。
専門は少子化対策や東京一極集中、女性活躍推進など。
エビデンスに基づく分析や提言に取り組み、政府や地方自治体、経済団体の人口問題関連委員を多数務める。著書に「まちがいだらけの少子化対策」((一社)金融財政事情研究会)など。
