先日も結婚相談所を運営される方からこんな報告がありました。
「40代前半の結婚希望の男性が2名、たまたま同じ日の午前と午後にお見えになりました。お二人とも余裕の表情で『そろそろ子どもが欲しいので若い女性を希望します』と異口同音におっしゃったので、『また来たか!』と焦りました」
「とりあえず、天野先生の研究会のデータをお見せして、40代前半は、まず年の離れた若い年齢の女性に選ばれること自体が極めて難しい年齢であることをご説明したら、お二人とも一気に顔面蒼白状態に。『どうしたら結婚相手に選ばれますか?』と、それまで余裕たっぷりだった態度ががらりと変わりました。お二人は決して無茶ぶりをしているつもりはなく、結婚の実態を知らなかっただけのようです。お二人の親御さんも『そろそろ孫の顔をみたいかも』と、おっしゃっていたようですね。もっと結婚希望者やその親御さんたちに、実態を知ってほしいと思います」という報告でした。
結婚を遅らせて自分の年齢がアラフォーとなっていても、なぜか若い方との年の差婚が簡単にできるように誤解している男性は少なくありません。また女性でも「高学歴化したし『晩婚化』って聞くし、30歳近くになって結婚したくなったら婚活しようかなあ」といった方も少なからずという状況です。しかし、国の婚姻統計のデータを分析すると、結婚希望がある方は、婚活開始、そしてお相手を決める年齢が早いに越したことはない、というデータが明確に示されています。
初婚同士婚・男性編
結婚年齢の実態について、まずは全国データをみてみましょう。
2023年に婚姻届を提出し、結婚生活を開始した初婚同士婚の男性23.3万人のうち、最も結婚数が多かった(最頻値)のは、27歳の男性でした。
その次が26歳で、28歳と続きます。この26歳から28歳の男性は、それぞれの年齢で2万人以上成婚数があります。
次に、上のグラフだと統計上の結婚多発期となる「適齢期」が見にくいので、国全体でも成婚数が1000人をきってしまう47歳以上成婚を省略したグラフを再度、見てみましょう。
なんと厚生労働省から発表されている2023年の男性の「平均」初婚年齢の31.2歳と、最も多く結婚が発生した27歳とでは4歳もの年齢差があることがわかります。
「平均初婚年齢が31歳か。じゃあ30歳くらいの婚活でいいかな」では、もし他の多くの婚活男性と同じような女性に対する希望条件を持っているのであれば、対象となる女性の多くはすでに他の男性と交際または結婚済みで、たとえ30歳であっても「婚難」に陥ります。
一夫一婦制の早い者勝ちの世界ですから、最も多くの男性が結婚を決めた26歳から28歳を過ぎると、「おかしいな、自分の条件にあう女性に出会えないないんだけれど・・・」となるのは当然ともいえます。
統計的には、23年に発生した初婚同士婚のうち55.7%が29歳までの男性で占められています。そして30歳の男性までが62.4%、32歳までの男性が72.4%を占めます。
要は平均初婚年齢までには、初婚同士婚を果たした男性の7割以上が結婚を済ませているのです。
初婚同士婚・女性編
さて次は女性編です。といっても、男性とあまり変わらないデータです。
結婚年齢の最頻値(もっとも多い年齢)は26歳で、27歳、28歳、25歳と続きます。この25歳から28歳が各年齢で2万件以上の成婚がある年齢です。女性の方が1000件を切る年齢が男性の47歳より若く43歳からなので、女性の方が短期集中型婚活となっています。
統計上の結婚多発期となる「適齢期」を見やすくするために男性同様、43歳以上の成婚を省略したグラフを見てみましょう。
グラフのオレンジ棒は2023年の平均初婚年齢29.6歳のあたりです。つまり、男女ともに実際の結婚多発年齢と平均初婚年齢には4歳もの差があることがわかります。
また女性の方が短期集中型婚活と書きましたが、成婚者のうち28歳までの女性が57.1%、29歳までの女性が65.1%、30歳までの女性が71.5%を占める状態となっています。
他の多くの女性と似たような希望条件をもっているならば、そのような男性が他の女性と交際・結婚してしまう前、つまり自分が30歳までの成婚を目指す必要があることが統計的には示されています。
福井県の初婚での結婚年齢
最後に、では福井県での結婚はどのような発生状況なのかを見てみましょう。国の統計では、県単位に関しては初婚について「お相手が初婚か再婚か」を分けていないために、福井県の数字は、相手に再婚者も含む成婚数の結果です。
2023年の婚姻統計を分析すると、福井県の初婚結婚では、男女ともに57歳以上の成婚は各年齢で1件、または0件のため、見やすくするためにグラフからは省略します。
2023年に福井で初婚(当該年に結婚生活に入り届け出たもの)で結婚した女性は1801人、男性は1770人です。女性の方が初婚成婚数が多いのは、結婚相手として「再婚の方OK」が女性の方が多い傾向にあるからと思われます。
男性は自分の年齢が上がって周囲が既婚者だらけになっていても、相手の女性の年齢のみならず婚歴にまでこだわって、自ら成婚を遠ざける傾向があり、女性よりも「婚難」になる傾向にあります。男性婚活者やその親御さんは、成婚を遠ざけてしまうこだわりをもっていないか、意識して頂きたいところです。
まず福井の初婚男性の年齢ですが、2023年でみると、全体の初婚結婚者の49.8%が28歳までの男性でした。つまり2人に1人は28歳までの男性ということです。最も結婚が多かったのは26歳の男性です(174件)。成婚が県全体でも各年齢でみて100件を超えたのは、24歳から31歳の男性までになります。30歳までの男性で63.3%、32歳までの男性で73.7%に到達します。
ということは、33歳以上での婚活は「婚難度注意」といえます。ちなみに34歳までの男性で80.6%を占め、「婚難度高」に突入といえます。
女性は25歳が最頻値で、各年齢で100件を超えるのは24歳から30歳までの女性となります。やはり、国全体と同じく男性と大差はありません。27歳までの女性で50.5%、28歳までの女性で59.7%、30歳の女性までで73.3%となりますので、30歳までの婚活であれば、他の女性と同じようなお相手(競争率が高い相手)への希望を持っていたとしても、結婚はそこまで難しくはないでしょう。女性も32歳までの女性で81.8%となり「婚難度高」となります。
「初婚結婚を叶えた人々」の動向から見て、統計的に見ると福井県での初婚での結婚年齢でみた「難易度」は以下のように示されます。
初婚人数に占める割合と婚難度(福井県)
出会えた奇跡、作り上げる未来
結婚はスタートに過ぎませんが、そうはいうものの、まず出会い自体が奇跡です。統計データからは、福井県全体で最も成婚した数が多い年齢でも、女性201件(25歳)、男性174件(26歳)に過ぎないことが示されています。
数少ない、いかに貴重な出会いなのか、ご理解いただけるのではないでしょうか。
「オレワタシの理想の相手にこだわる」のでは、一生見つからない状況に陥る可能性が高いかもしれません。
ヒントとして、30代以降で婚活される方は、相手との年齢差を統計上7割を占める「3歳差まで」にしぼり、そして、「自分の年齢との上下関係」、年齢上昇とともに割合が増加する「お相手の婚歴」などにおいて、自分や自分の親御さん目線だけのこだわりをまずは脇においてみることで、生涯を共にする素敵なパートナーの存在に気づくことができる確率が大きく上がるでしょう。
最低限こだわるべきは、ただ1つ「様々なライフステージについて、お互い様の精神で、互いの気持ちを素直に話し、ちゃんと話し合いができる相手かどうか」ではないかと私は思います。
これが成立しない相手とは、結婚後少なからずトラブルが発生します。また、DVや子どもができた後の対立につながることも予想に難くありません。
データコラム第一回目の最後に、私の2019年の著書「データで読み解く『生涯独身』社会」でご紹介した言葉をお伝えして締めくくりたいと思います。
結婚するときはこう自問せよ。「年をとってもこの相手と会話ができるだろうか」。
そのほかは年月がたてばいずれ変化することだ。
ニーチェ
お話いただいた先生はこちら
ニッセイ基礎研究所
天野 馨南子氏
あまの・かなこ
ニッセイ基礎研究所生活研究部人口動態シニアリサーチャー。
専門は少子化対策や東京一極集中、女性活躍推進など。
エビデンスに基づく分析や提言に取り組み、政府や地方自治体、経済団体の人口問題関連委員を多数務める。著書に「まちがいだらけの少子化対策」((一社)金融財政事情研究会)など。